【アーカイブ】屋久島の土を掘る! 生態系を支える、土壌の謎
講師:藤井一至さん(ふじい・かずみち)
国立研究開発法人森林研究整備機構 森林総合研究所 主任研究員
スコップ片手に世界をめぐり土を掘り、土の成り立ちや持続的な利用方法を研究している土の研究者。「又吉直樹のヘウレーカ!」(NHK総合)、「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(NTV)などにも出演し、土のすばらしさ、大切さを広く伝えている。2019年第7回河合隼雄学芸賞受賞ほか、多数の受賞歴あり。著書に「土 地球最後のナゾ〜100億人を養う土壌を求めて」(光文社)、「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」(山と溪谷社)。
改めて考えてみましょう。「土」ってなんでしょう? 屋久島は花崗岩の島とよく言われますが、ではどんな土があるのでしょう? みなさんの頭の中にある「土」の概念を覆す、驚きの講義、スコップ片手に世界中の土を掘り、成り立ちを調べ生きもののつながりを読み解いている藤井一至さんによる“土物語”が始まります。
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土の研究者・藤井一至とはナニモノか?
まず簡単な自己紹介から。私は地味な土の研究者ですが、今日は屋久島のおかげでたくさんの方(約200人)に来ていただいて感謝します。
とりあえず僕がしていることは自分の足で現場に行って、土を見るということです。
ときには土の情報が古くなっている高校地理の教科書について、新しい情報に改訂しましょうという提言を出したりもしています。
本日のお題は以下の3つです。
- 屋久島の土は貧栄養?
- なぜ屋久島にドジョウはいないのか?
- 屋久島の土はいかに生態系を支えているのか?
これらについてお話していきます。その前に「土とは何か」ということについて説明させてください。
土とはなにか
「土」という漢字は地面と岩石の面と植物の地上部と根っこを表して、「土」という漢字になっています。右側の「壌」はというと、土へんに、この右側の部分は耕すという意味があるので、土壌の「土」は自然の植物を支える、培地としての土で、「壌」は耕す土――つまり畑の土のような意味です。
土壌という言葉は、自然の土と人間が耕す土でできていて、私はこの「土」と「土壌」両方の研究をしています。
簡単に「土とは何か」を言うことは難しいですが、20年ほど前に飛行機で隣になったオーストラリアの小学生に教えられたことがあります。彼は「土は岩が分解した砂と粘土と死んだ植物が混ざったもの」と土のことを表現しました。びっくりです。ちゃんと学校で土について習う機会があれば小学生でも答えられる。それ以来、わたしもこの伝え方を使っています。
岩と土の違い
岩から土ができるのですが、1つここで覚えておきたいことは、岩は重いということ。だいたい、比重が3ぐらいあります。対して土は比重1ぐらいです。土自体の粒子の重さは岩と同じぐらいですが、体積として3倍ぐらいに膨れ上がっています。つぶつぶの大きさは変わらないのに、10センチの岩からは30センチの土ができるということです。なぜかというとこの岩の中に空気と水の通り道ができると、それが、岩が土になるということなんです。岩に水や空気の通り道ができて、ぼろぼろになってフカフカになっていくんですね。
植物もただ落ち葉が積み重なって細かくなっただけではありません。微生物によって食べられて、その食べ残しや微生物の死骸そのものが成分として残って、土の材料になるのです。
こうしたそれぞれの過程がとても大事なことなんです。
ところで植物は全部土になるわけではなく、落ち葉の99%は二酸化炭素に戻ります。残り1%だけが土になります。
非常に長い時間をかけて土ができていきます。
岩のサイクルは2億年ぐらいあって、岩が土になり、土が岩に戻ります。屋久島は1400万年という話がありますが、もっと長い……2億年ぐらいで土が岩になり岩が土になるという地球のサイクルがあるんです。
鉱物、岩石、堆積物、土壌のちがい
さて、岩と土がどう違うか。
岩には生きものがいなくて生きものの活動がありません。
土は微生物など生きものがいますが、化石など生きものがいないものは岩扱いです。生命活動があるかないかというところが違いになります。
堆積物と土の違いは? たとえて言うなら、堆積物はよそからやってきた転校生で、土はその場所で育った在校生みたいなものです。転校生も学校で1日過ごせば在校生になりますが、でもその場所で変化が起きていなかったらまだ堆積物です。
土の色
土を見て最初に得る情報は何か? おそらく色じゃないでしょうか。
土は、黒いと植物の腐ったもの、腐葉土が多いです。白いと石英、花崗岩、砂が多いです。赤や黄色だと粘土で、その中の鉄サビや鉄の酸化物が赤や黄色に出ます。
フライパンで焼くと土は赤くなるんですよ。要するに熱いところほど鉄サビが赤くなり土も赤くなります。
ただ、どの材料も混ざりあって土の中に存在しています。その比率が違うことで黒、白、赤、黄色、茶色……というふうに見え方が変わるわけです。この比率によって色だけではなく土の性質も変わってきます。
土壌生物の多様性
土でもう一つ大事なことは微生物がいるということです。どこかで「腸内細菌と土の微生物が似ている」という話をお聞きになったことがあるかもしれませんが、共通点でいうとまず「どちらも生きものがたくさんいる」ことです。土にはティースプーン1杯(10g)に50億個の細菌がいて種類は1万種類。しかし80%は休眠しています。
一方、腸内にはスプーン1杯に5億個の細菌、種類は1000種類。そして80%が活動的です。
土は腸内よりも圧倒的に栄養分が少ないので、だいたい10倍ぐらい多様性が高い。腸内は栄養分が多いので多様性があまりありません。腸内にはカビやキノコなどの生きものはいませんが、土の中にはカビやキノコもいます。そういう大きな違いがあります。
腸内では細菌1個あたりウイルスが1個感染していると言われています。一方、土はだいたい10個に1個ぐらいの感染率です。なぜかというと、土の微生物はほとんどが寝ているためです。腸内細菌は消化活動を担っているのでみんな活発でいなければならない。そして微生物が頑張ってくれるおかげで微生物が死んだらウンチとなって出てくれるわけで、そうやって新陳代謝が回っているんですね。
一方、土はゆっくり、ゆっくりと物質が回っているというイメージを持っていただければいいかと思います。だから、腸内細菌と同じではないんですよね。特に土にはカビとキノコがいるという違いは大事です。
食物連鎖、共生だけではない相互依存、共存
さきほど粘土と砂があり、植物の腐植があることが土だと言いましたが、もう一つ大事なことはそこに生きものの連鎖があるということです。
落ち葉を細菌が食べてキノコが食べる。キノコや細菌を食べるやつがいて、またそれを食べるミミズやムカデ、トビムシがいる。そしてそれらを食べるネズミや鳥がいます。これだけだと一方通行ですが、トビムシのフンや死骸が土になって、そこにカビやキノコが生えるという連鎖の仕組みがあります。それが土の面白いところなのかなと。
私自身は「共生」というと人間の都合のいいように解釈している、美化しすぎていることが多い気がして、相互に依存しあっている「共存」のほうが謙虚でいいんじゃないかと思っています。
生物土壌巻相互作用
ここで私が実際どのようなことで感動しているか? 屋久島の事例ではありませんが1つお話したいと思います。
オランウータンがいる、インドネシアの事例です。
植物は外生菌根菌と共生しています。たとえば、アカマツだったらマツタケですね。植物はそういったものと共生していて、光合成して根っこのまわりに糖分やクエン酸という形で出します。すると根っこの周りの微生物がそれをたくさん食べてリンゴ酸を作ります。リンゴ酸というのは、私たちがりんごを食べた時に「酸っぱい」と感じるその成分です。
そのリンゴ酸が鉄をくっつけているリン酸を溶かし出し、そのリン酸が植物に届きます。
またさらにもう一つのリンゴ酸が落ち葉を分解するキノコーーたとえばマツタケ、マイタケ、シイタケや、エリンギなど白色腐朽菌という木材や落ち葉を分解するキノコの酵素の酸化力を高めて、それで落ち葉を分解します。そしてそれが水に溶けて粘土とくっつくと土に、あるいは川に流れると茶色い水になります。
茶色い物質が出てくる中で、窒素やリンがうまく循環して植物やオランウータンに届いていくーーそういう仕組みがあるんですね。
細かいことを知っていただきたいわけではないんです。お伝えしたいのは、この仕組の中に植物と外生菌根菌のマツタケの仲間や、根っこの周りの生きものや粘土、白色腐朽菌のエリンギの仲間などがたくさん関わって、最後にオランウータンや植物にもう一度帰ってくるという物質循環が起きてくること、いろんな生きものが土と関わり合った相互の状態があること。そこに私が興味を持っているということなんです。
土のきた道 5億年
インドネシアの事例よりもっと長いレベルで見たいと思います。地球は誕生して46億年と言われており、その年月の中でずっと大変動を続けてきました。植物が海から上陸したのが5億年前と言われ、ミミズが上陸したのが4億年前、シダや松が生えて昆虫やキノコが登場し恐竜が登場し、さらに広葉樹などの被子植物が現れ、そうしてその先に今、私たち人類がいます。
生きものだけではなく土も進化してきています。生きものの連鎖の中で土も動的に変化している、そういう歴史のスナップショットを今、私たちは見ているのです。
土壌生成因子
「土は5個の要因で決まっている」と言ったロシアの研究者がいます。ドクチャエフさんという方ですが、その5つとは「時間」「気候」「生物」「岩石」「地形」です。この5つの要因で土は決まっているというようなことを言っています
これに基づいて世界中の土の研究者が「世界にはどんな土があるんだろう」と調べた結果、2つとして同じ土はないということが分かったんです。しかし、それでは研究にならないので、同じような土をグループ化していったところ、一番単純な単位まで大雑把に分けていくと12種類に分けられました。
泥炭土、ポドゾル、チェルノーゼム、粘土集積土壌、永久凍土、若手土壌、黒ボク土、強風化赤黄色土、ひび割れ粘土質土壌、オキシソル、砂漠土、未熟土の12種類です。
寒いところは永久凍土が多いとか、日本はネバネバした茶色い土や火山灰が多いとか、熱帯に行くと赤い土や黄色い土が多いなど、なんとなくそういうイメージはつかなくもないですよね。
砂漠に行くと乾いた土があるし、水辺に行くと植物が分解されて溜まる泥炭土がありますね。ウクライナがロシアに狙われているのは、肥沃な土、チェルノーゼムがあるから……とか、いろいろなことが分かってきます。
とりあえず、いろんな土が世界中にあり、それはなぜかというと5つの要因が関与して5億年の中で今の地球の土の分布ができあがっている、そのことを覚えていただければと思います。
水浸しだと泥炭になり、インドだと玄武岩で粘土質な土になる。火山灰が多いと日本のように黒ボク土になるし、風化して茶色い土になる。さらに熱帯に行くと黄色や赤い土になる。寒いところに行くと永久凍土やポドゾルになる。乾燥すると砂漠土になり、そこに草が生えると黒い土になっていく……そういう整理がされていくわけです。
屋久島を取り巻くアジアの土
屋久島の前に、屋久島の周囲で私が見てきた土をもう少し紹介していきましょう。
たとえば京都は茶色い土になります。熊本は火山灰で、阿蘇の影響があると言われていますが、溶岩流の影響を受けた堆積物です。奄美大島だとフェイチシャというマニアックな名前ですが黄色いネバネバした土があります。沖縄には国頭マージ、「パイナップルにいいよ」と言われている土があります。
台湾の土は阿里山の上の方の土はポドゾルです。海南島とインドネシアは黄色い土。アジアは最終的には黄色い土になっていく傾向があります。小笠原はちょっと母材が無人岩とか鉄が多かったりして赤くなりますが、それ以外は基本的には黄色くなる傾向があると思います。
植生の垂直分布 気候も土も変化する
さて、屋久島です。
私が個人的に屋久島で興味があるのはブナがないことです。私の出身地、富山県立山町にはブナとタテヤマスギがあって、最後、弥陀ヶ原があって高山地帯になっていくイメージがあるのですが、ブナがないというのは屋久島のすごく面白いことだと思っています。
そして、私の知る限り……標高の低いところでは土を掘っているとヤクザルとの戦いが待っているんですよ。私はおにぎりを取られたことがあります。囲まれて大変でした。ヤクザルは結構、西部林道のほうにいますね。
標高1000メートル地点はスギ樹林帯で、ヤクスギランドとかがそうですね。屋久島では標高によって植物が違うというのは皆さんご存知かもしれませんが、動物は高いところにヤクシカが多く、低いところにヤクザルが多いですね。
そして私の専門で言うと、標高の高い方は花崗岩が多くて下の方に行くとだんだん火山灰が増えてくるという話をしたいと思います。
火山灰、縄文人 草原、焼き畑、クリ
まず1つ大事なこと。長い歴史の中で日本は数々の火山の噴火で火山灰がたくさん飛んでいます。その飛んでいる範囲を何百年、何万年の単位で記している研究者の方がいるのですが、それを見るとやっぱり屋久島はいろいろな火山灰を被っているということがよく分かります。阿蘇の前の阿多カルデラの噴火ぐらいからのものが記されていたりと、とりあえずいろんな影響を受けている島なのだということが分かります。
日本には今も元気な活火山が多数ありますが、火山灰は基本的に偏西風で東に堆積することが多いので、だいたい活火山の東側は黒ボク土になることが多いです。
もう1つ面白いことは、土が黒いところと縄文時代の遺跡がだいたい重なるんですね。まあ、重なるから縄文時代の人の黒い土を作ったんだと言う話もあります。
その話はこういうわけです。縄文時代の人たちはノコギリやチェーンソーとかありませんのであまり木を切れなかったんですね。だから草で家を作らなければいけない。あるいは草が多い方が、草食動物の住処がいっぱいあって狩りがしやすい。そういう理由で、あえて火入れし続けて草原を維持して、それによって炭がたくさんたまって黒い土ができたということですね。
でもそういうことがなくても土は黒いことがあるので、ひとつは火山灰が必須条件で、もう一つは人間がいるところほど色が濃いところが多いということです。
黒い土は日本の3割を占めます。ところが、世界的には1パーセントにも満たない。日本にとっては当たり前の土が、世界にとっては非常識の土になるんです。
九州のシラス台地
ところで、屋久島に限った話ではないですが、私はよくこういいます。「日本では火山灰は100年で1センチ積もります。世界は平均すると千年で1センチです。火山灰があるかないかで土のできるスピードが違いますよ」。しかし九州、特に鹿児島に住んでいる方は、桜島がありますから「俺のところは1センチどころじゃないよ」とおっしゃいます。なにしろ火山灰の捨て場所があって、毎週回収されているんですから、100年で1センチという速度じゃないということが分かっていただけると思います。
余談ですが、AKB48だった柏木由紀さんのシングルに『火山灰』という曲があります。柏木さんは鹿児島出身なんですね。アイドル生活を左右しているという意味で土は重要、いろんなところで影響していると言えるかなと思います。
島を飲み込んだ火砕流
ようやく屋久島の話です。
屋久島でいちばん大事なのは、鹿児島の人はご存知でしょうが29000年前に噴火したものすごく大きい姶良というカルデラがありますし、桜島はいまでもありますから、大きな火山が昔からあったんだろうということ。
姶良カルデラの巨大噴火によって噴出した火山灰は姶良丹沢火山灰(姶良Tn火山灰)と言われ、日本中どこにでも薄く積もるほどでした。広域火山灰と言われます。
もう一つ、屋久島に関して言うと7300年前と言われている鬼界カルデラ大噴火ですね。鬼界カルデラは今の硫黄島の辺りを含むカルデラですが、この噴火の時の噴出物が海を渡って屋久島を結構飲み込んだんです。ちょっと被ってないところもあるとはいわれますが、ほぼ飲み込んだと言われています。そのときに一緒に出てきた火山灰をアカホヤといいますが、火砕流とアカホヤどっちも似たような時期に火山から出てきたもので、どちらも似たようなものだと思います。そういったものが元々の花崗岩の母岩である花崗岩の上に溜まっているのを見ることができます。これは西部林道のところで見たやつだと思います。
小原 幸屋火砕流とアカホヤが分かれて積もっていますか。
結構はっきり線があるんですよね。もしかしたら違うかもしれない。ここではっきり違いは見えるんですけど、もしかしたらどっちも火砕流かもしれない。二次堆積かもしれないです。
地質と土のちがい
そうすると、屋久島は堆積岩から花崗岩が頭を突出しているところに、火砕流なり火山灰などの赤いものが乗っかったというイメージなんですけど、それだけじゃないというのがまず1つ重要なことです。
先ほど土で地形が大事だって言いましたけど、地形で乗っかったものが洗われちゃうんですね。侵食って言いますけど、移動してしまうの、そうすると上の方に花崗岩が多くなって、下の方が火山灰というふうになってしまうんじゃないかというのが一番最初の理解としてありました。
ただし私が実際見て思ったのは、ここら辺をよく見るといろいろ混ざってるんです(赤丸内)。
ただ1回目に来てそのまま堆積したというより、いろんなものを飲み込みながらここに溜まってきたということですね。ここの中に花崗が溜まってきたりするというのが結構大事なところです。
ただ移動しただけじゃなくて、その時にいろいろ花崗岩と混ざりながらきているというのが屋久島の難しいところだと思います。
えぐさ チャットの質問の中に「火山灰は赤いんですね」というコメントがあります。
ええと、火山灰は必ずしも赤くないです。シラス台地のように白いものもあります。白いものっていうのはケイ素が多いんです。さっきも砂が多いとか言いましたけど、ざっくりいうとシリコン(ケイ素)が多い時には白くなりやすくて、鉄が多いと赤くなりやすいです。アカホヤは、「アカ」ホヤって言うぐらいだから、ちょっと赤いですね。鉄は熱の色で土の色が変わると先ほど言いましたけど、鉄が多いと赤くなりやすいです。
地質の人からすると「屋久島というのは花崗岩の上に火山灰が乗っかっているよ」、とか、「だいたい花崗岩だ」と言います。地質の研究者は花崗岩をプッシュしたくなるし、土の研究者は火山灰をプッシュしたくなるんですけど、実際のところは「自分で見てよく考えてください」というのが正直なところです。
屋久島を掘る!
ようやく、屋久島で私が掘った話です。1回しか行ったことないのに「ここらへん調べてきて」と言われて……。
まず一番最初はヤクスギランドの周辺です。ヤクスギランドから1キロぐらい歩いたところです。
1番下のところには花崗岩が見えていて、そこから土ができているからいちばんシンプルな土だと思います。花崗岩が土になったのですね。私はいつもこれを、岩からどう土ができるかっていうことを考える時に、代表例に使わせていただいています。
えぐさ 写真は紀元杉ですけど、この土は紀元杉の近くにあるんですか?
紀元杉から、1キロぐらい山のほうに上がって行ったところにあります。
もう一つ(写真右)は、そこからさらに横に行く道があると思うんですが、そこから100メートルぐらい行くと、こういう土があります。
これ、難しいんですよ。写真に線を引いてみます。
みなさん、見えますか? このラインがなんとなく見えるようになると1人前の土の研究者と呼ばれる。見える人には見えるし、見えない人には研究じゃないと言われたりします。なんとなく見えるようになっていただけるといいんですけどね。
面白いのは、下の部分(A)は花崗岩なんですが、その上に火山灰が乗っかっています(B)。その後にもう一回おそらく上の方から花崗岩が落ちてきているんですね。(C)は花崗岩なんです。こういうものを見ると、屋久島というのは難しいなと思うわけです。
本当なら、先程言ったように花崗岩の上に火山灰が乗ってるというのが話としては分かりやすいのですが、上から何回も侵食というか、土砂崩れみたいな現象が起きて、複雑な土が出来上がっているという姿が屋久島の土なんですね。屋久島の土についての論文はあまり出ていないんですが、それは、やっぱり複雑だからなんですよ。屋久島の土って結構難しい。研究するのは大変なんです。
ここにも線がありますね(赤い矢印の部分)。
これもなぜこんなにはっきり線が分かれるのか説明できません。火砕流の火山灰だと言う人もいますけど、線があまりにもピッキリ分かれているので、一度溜まったところに上に黒いものが溜まっただけのような気もします。この辺も悩ましいところです。
こちらは西部林道です。
これは本当に難しいですね。この白い点線の部分、1回昔の地面だったところですね。昔の地面があったところに、さらに上から何か溜まってきてゴチャゴチャしている。こういう難しい土があったりします。
あと、西部林道沿いの山の上の方でヤクタネゴヨウのすぐ下のところに出てきています。
ヤクタネゴヨウは、大河ドラマの「篤姫」の舞台となったのでご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、鹿児島の仙巌園(島津家の別邸跡)に立派な木があります。
※注 仙巌園には推定樹齢200年とされるヤクタネゴヨウの木があった。ヤクタネゴヨウは種子島と屋久島にしか自生しない。
でも大概はこんなに大きくなりません。小さいのが崖っぷちとかに生えていることが多いと思いますが、根っこの下のほうに白い土がありまして(写真左下)、分析した結果、黄砂由来の土が堆積していると思います。ヤクタネゴヨウの根っこによって、飛んでくるものが溜められているわけですね。こういう複雑な土もありました。
黄砂の影響
なぜ屋久島がこんなに複雑なのか。その理由として、屋久島には結構色んなものが届いてますよというお話をしたいと思います。
黄砂も大陸に近いほどたくさん飛んできます。黄砂というとPM2.5で嫌なものだというイメージがありますが、それだけではない。
地球規模でいうと、サハラ砂漠の砂がブラジルのアマゾン栄養分の補給になっていると言われるように、黄砂も遠く飛んでいって、太平洋に行くとマグロの栄養になっていると言うぐらい、栄養分にもなっているんですね。さきほどのヤクタネゴヨウのように、屋久島にも結構、黄砂が入っているなと思っています。
花崗岩母材でスギ生育不良って本当?
それでは、最初に言っていた具体的なところを考えていきたいと思います。
よく人々が言う「屋久島の土は貧しいからスギが育ちにくい」ということの実際です。
火山灰の母材って本当に貧栄養なのかという問題意識を最初持っていました。たとえば写真の左は国立科学博物館にある標本ですが、1600年でこれだけしか育っていないと見ると、
花崗岩というのは、そこから出てくるのが園芸用の土でいうと真砂土(まさど・まさつち)っていう土になります。真砂土というのは保水力もないし、貧栄養で、酸性のダメな土で、園芸用として安いけれどあまり良い土ではありません。
だから屋久杉も、花崗岩の上では成長も遅くて年輪も細かいんだという話になります。
隣は私の研究所にある秋田杉なんですが、150歳で同じようなサイズになることを思うとなんか成長遅いように感じます。でも、私が知っている限り一番ひどい場所にある木で言うと、永久凍土にあるクロトウヒは200歳ぐらいですが、だいたい直径7センチぐらいにしかなりません。
何と比較するかによって全然違うということがまずひとつあります。
さらに、屋久杉のような、でかくて成長が遅い木もあるというだけであって、毎木調査で森全体の成長を測っている人のデータを見る限り、1年間に20トンぐらい成長しているので、森全体で見ると成長が遅いわけではない。木の1本、1本の年輪が細かくて成長が遅いように見えるけど、森全体では他にも若い木があったりして、必ずしも成長が遅いわけじゃない。少なくともデータではそうなっている。
あと「花崗岩だから貧栄養だ」と言いがちなんですけど、花崗岩だけの土はほとんどないんです。火山灰や黄砂が混じってる、複雑な土が屋久島だなという感じなので、もうちょっと土を見ると簡単に「花崗岩だから貧栄養」とは言えないのでは? と思います。
屋久島にドジョウはいないか
次の話題は、知っている人は知っている、屋久島ドジョウいない問題です。
1937年以降、屋久島ではドジョウが見つかっていないということで、九州大学の鹿野雄一さんという方がドジョウを探しています。なぜかというとドジョウがいないことを証明することは大変なんです。
鹿野さんと出会ってすごく衝撃を受けたのは、鹿野さんは屋久島じゅうの川の中を泳いでドジョウを探してるんです。「いる」ことは一匹見付けたらいいんですけど、「いない」ってことを証明するのは大変で、少なくとも1937年以降、屋久島でドジョウは見つかっていないんです。
隣の種子島にはたくさんドジョウがいるので、ずいぶん違いますね。
一番の違いは、ドジョウは田んぼを住処にしている生き物であるということがあって、平らな種子島、山が多く田んぼがあまりない屋久島、ということが影響しているのかもということと、花崗岩母材+雨が多くて+酸性雨が降ってきて、そういう条件で屋久島の川は酸性河川であると言えます。川の水が酸性になると、川の中で生きる昆虫が少なくなるという話があります。そうすると、それを餌にするドジョウには厳しいのかな、というようなことも考えることができます。
でも本当かどうか分からないので、ちょっと調べてみましょう。
酸性雨の影響
まず、実際になぜ屋久島が酸性雨なのかという背景は、やはり大陸と近いから酸性雨がくるということがあります。水のpHを測ってみると、中国、特に台湾の間際のところで一番酸性の水が降っています。硝酸や硫酸が高くなっていて、それは結構屋久島にも届いています。
特にアンモニアが落ちてくると、硝酸になる時にたくさん水素イオンができて、それによって酸性になるということが懸念されます。
なぜかと言うと、人間の活動と連動していて、硫黄は石炭だし、窒素は肥料や車の工場とかから出て来るんですね。面白いのは、コロナの時に一度ロックダウンをしたら、中国から窒素の排気ガスがあっさりなくなったということがあって、窒素はそれぐらい人間の活動によってもたらされているものです。
ロックダウン前後で窒素の降下量が大きく変わったということも言われていて、それは人間活動の影響が中国の方であり、それがどうしても西のほうに届くので、その結果、屋久島にも来ているのかもしれないということですね。大陸から来る窒素が土や水を酸性にする可能性があるということです。
屋久島超軟水問題
そういう意味で水のことを考えてみたいと思うのですが、ミネラルウォーターは市販されているものの中でも硬度がいろいろあります。軟水、硬水など聞いたことがあると思いますが、特に石灰岩のところの水は硬度が高いです。土や岩に炭酸カルシウムが多いので硬度が高くなる。
日本はカルシウムがないので硬度は低くなります。火山灰とか火山岩、黒ぼく土のところでは低くなります。
海外でも山がちなところは低くなりやすい。ノルウェー、フィンランドは低いです。
屋久島はどうかというと、「屋久島縄文水」は調べてみると硬度は10(※数値は水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの合計含有量の指標)で、超軟水ですね。好きな人は好きなようですね。
さて、硬度が低いというのは地質と関係するでしょうか。1回だけ屋久島に行った私が、屋久島についてなんとか書いた論文のデータを紹介すると、
材料として、花崗岩と火山灰と黄砂、それぞれどういう風に関わっているか。
X軸はカルシウムとかの量だと思ってください。カルシウムの量は特に火山灰に多くて、花崗岩、黄砂というふうにだんだん減るんですが、そうするとpHがすごく下がりやすくなり、酸性になりやすいです。黄砂は酸性になりやすいとか、花崗岩も結構下がりやすいとか、火山灰は結構粘るということが分かります。
そういうことから「屋久島縄文水」は、はっきり分かりませんが、私が思うに上の方で取水しているのではと思っているんですが、花崗岩が多い所や黄砂が多いところだと、カルシウムが少なめになるのかなと思ったりします。pHは多分中性ですので、必ずしも酸性ではない。
もう一つ、右のグラフのデータですが、山の標高の高いところだと酸性になりやすい。恐らくカルシウムも少ないと思います。標高が低いところだとpHが高くなり、カルシウムが多くなるという傾向がみられます。たぶん火山灰が多いところだとカルシウムがたくさんになって、花崗岩が多いところだとカルシウムが少ない水になって、「屋久島縄文水」のような水ができてくるのかな、ということをイメージすることができます。
私が思うのは、高標高の花崗岩・黄砂が母材だった場合には、水、土は、酸性になりやすい。でも基本的には、ミネラルウォーターは低標高の所で取っていると思うので、そうすると火山灰の土があって、だいたい水は中和されるんじゃないかなと予測します。
そして、ドジョウは大概低いところに住んでいるので、水や土が酸性だからドジョウがいないというわけではないんじゃないかな? というのが、僕が思った土壌ではなくドジョウの問題です。
地質学的施肥効果
屋久島は火山灰の土が多いということで、火山灰の土について話しておきたいと思います。
火山灰は黒い土が多いんですけど、なぜ火山灰は黒いのかというと、火山灰の粘土はすごく吸着力が強くて、たくさん腐植をくっつけることができます。一方で、強い吸着力ゆえに、肥料の3大成分であるリンも同じ仕組みでくっつけてしまいます。
東北地方でこの土を見ていた宮沢賢治は、この土のことを「悪い土(荒土)だ」と言います。一方で、チリ辺りの火山灰とか火山灰土壌を見ていたダーウィンは「肥沃だ」と言います。同じ火山灰をある人が見れば貧栄養で、ある人が見れば肥沃だと言われる。
なぜこういう違いがあるかと言うと、宮沢賢治は農業の専門家だったので作物や稲を育てたり、畑をすることを考えていた。そう考えるとこの土は、畑の作物にとっては粘土と植物が栄養分を競争してとりあって、植物が勝てないという意味で、肥沃じゃない土になってしまう。
逆に森林など自然の植生をイメージしているダーウィンからすると、自然の植物というのはかなり火山灰にも対応することができるので、火山灰だとリン自体はたくさんくっついているもんだから「土が肥沃だ」という話になってくるわけです。
実際私たちのご先祖様は、今の埼玉あたりだと、この火山灰の土にリンがくっついて作物に届かないのであまりにひどいので、わざわざ火山灰があるところにその下の荒川の土砂を運んできています。何10メートルか低いところにあるにも関わらず馬に乗せて運んで、台地の土を客土したんですね。それを泥付けと言っています。砂を混ぜることで火山灰だけじゃない土にして、火山灰の性質を弱めて、作物を育てやすくしたんですね。
それをもとにして屋久島の土を見直してみると、ただ花崗岩や火山灰があるだけじゃなくて、ほとんどの土は黄砂や火山灰、花崗岩を飲み込んだ火山灰になっているんですね。私は、それはそこに生きるヤクスギや照葉樹林とそこに生きる生き物にとっていいことなんじゃないかと思いますね。
素晴らしい屋久島の自然を土が支えてるということを知ってほしい。と同時に、ただ単純な共生じゃないということを学ぶ場になったらいいかなと思っています。単純な共生じゃない。どうやって共存するかっていうことを模索する場所になったらいいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
チャットの質問コーナー
オンラインセミナーの最中には、ZOOMのチャット機能を使って参加者から質問や感想が寄せられてきます。その質問に藤井先生が答えてくださいました。
Q.火山灰は酸性のイメージがありました。
A.これ結構言われますね、NHKとかでも「日本は火山灰だから酸性」だと言ってます。確かに火山だと硫酸が多いので酸性というイメージがありますが、たいがい最初の火山灰の影響の硫酸はすぐに流れて、火山灰そのものにあるカルシウム、マグネシウム、鉄、その影響が出てくることが多いです。
火山灰って言ってもシラス台地などはガラス(シリコン)が多い、シリコンが多くて、鉄マグネシウムが少ないと言われているので、火山灰だから肥沃とは言えないです。
火山灰もピンキリで、アカホヤとか火山灰に名前があるというのは、もともとアカホヤは肥沃じゃないから特別な名称がついていると言うところがありまして、実際、年代が古いと火山灰でも酸性になります。日本の地って全部酸性なんです。火山灰があるとちょっとましになるというイメージに近いですね。
Q.落ち葉が土になるにはどのぐらい時間がかかりますか?
A.本当に土になるのは10年、20年かかるのではないでしょうか。でも早いところだと数年で落ち葉は形をなくしますけど、どうでしょうね。
Q.鬼界カルデラの火砕流が新しいものは幸屋火砕流だけど、古い方は船倉火砕流ということではないか。
A.ああ、はい、そうですね。多分そういうことだと思います。
Q.ミミズが4億年前から存在するってすごいですね
A.私も実はそれ、すごく感動していて、さきほど岩が風化して粘土とシリコンと塩ができるって言いましたけど、その塩ができるのがポイントで、一説では、岩や土ができはじめたことで塩がたくさん出てきて、それが海を塩辛くすると動物の上陸を促したということが考えられています。そのときに海を脱出してきた生き物がミミズの類いだと思うんです。私たち、数十万年の間に文明の危機を迎えているけれど、4億年生きている先輩がいると思うとなんとも感動しますね。それに、やっぱり一番の違いはミミズはゴミを出さない。ミミズが出すゴミは全部土になります。ここが人間と違うところでしょう。人間はいろんなゴミを出し過ぎていることを、ミミズからもっとたくさん学ぶべきですね。
Q.木が岩を溶かすという話ですが、どういうことでしょうか。
A.さきほどインドネシアの事例で出しましたけど、根っこから出されたクエン酸みたいなものや、マツタケの菌種から出てくるクエン酸みたいなものが岩を溶かしていきます。マツタケの類いっていうのは、その能力があるがゆえに、“岩を食べるキノコ”と言う別名があるぐらいなんですね。エリンギとかにはそういう能力がなく、同じようにマツにはそんな能力高いんですけど、スギにはそんなに能力高くないみたいで、強くないみたいです。スギは元々肥沃な土が好きで、そういうところで生きていることが多いですね。もっと肥沃じゃないところは、松などが出てきています。
小原 スギは結構、無機土壌が好きですよ。
そうなんです。今日も別の人とその話をしてたんですが、スギって、同じスギでも表スギと裏スギで形質が全然違います。マツと比較したときには、スギはかなり肥沃なところが好きなんじゃないかな、というのがあるんですけど、スギ自体でもバリエーションがあり、なかなかスギは難しいです。
Q.ヤクスギランドを歩いていると斜面が崩れていました。斜面の半分は白っぽい色をしており、もう半分は黒っぽい色をしていました。なぜ色がこんなにはっきり分かれるのか。その色が何を示すのかずっと疑問です。
A. 多分下半分が白っぽくて、上が黒っぽかったんでしょう。土は乾くと白っぽく見えやすい。削れたところだとそういうところがあるのかもしれない。
小原 風化花崗岩じゃないですかね。
ああ、花崗岩の色かもしれないですね。場所によっては花崗岩が露出してくるところもいっぱいあって、火山灰が堆積する量っていうのは地形次第で、急峻な所は全部火山灰が流れていて花崗岩だけのところもあります。地形が緩やかなところだと流れたものが全部溜め込んでいく、そういうところもあります。クリアに二つ層があったところはそういうイメージですね。二層あるところは、紀元杉からだいたい300メートルぐらい降りたところですね。
小原 林道沿いですね。
はいそうです、有名なやつだと思います。あれも、ただそこにあるというより、上からどんどん流れてきて溜まっているという認識なんですね。1回目の堆積だけではなく、2回3回といろんな動き方が起きているということでみているものなのかなと思います。
小原 あれは考察が必要ですね。
でも、私は他でもいろんな元素測ってますが、わりに連続性があるんです。割に似ている。まあそれは同じ時代の火山灰だから似ているんだろう、と言われればそれまでですが、全然違う異質なものが流れてきたというイメージではないです。
Q.地質と土の違いは。
A.岩石と土の違いは、生き物の活動があるか、ないかということで、あと屋久島に関してどう考えるべきかというと、花崗岩があって、そこに火砕流と火山灰が乗っただけだという考え方だけじゃなくて、それがもう一回地形によって、あるいは水の流れ方によって再堆積していて、そのことによってそこからまた土が始まっている。そういうことを考えていかないといけないところが、屋久島ってなかなか難しいなと思うところです。なので地質だけ考えてもだめだし、土だけ考えてもだめだし、まず自分でいろんな材料を集めて、自分なりの解釈してもらうというのが楽しいかなと思います。
小原 意外と面白いのが、尾根の上の平なところで土が動いていないところですね。
そういうところを狙ってやるときれいに姶良丹沢火山灰とかを見つけることができる。なかなかそういういい場所は僕には見付けられないです。小原さんなら見つけられるでしょうが僕は1回しか行ってないのでなかなか見つけられないですね。
小原 麓のほうで大きな道路工事があったときにきれいに地層が見えることがあるんです。
ああ、そうですね。基本的に地元に住んでいて、公共事業の現場をいっぱい見られる人というのはチャンスがありますね。土に関して言うと。3月の公共事業が一番ありがたいですね。土の情報については、道路建設の時に一番得られたっていう時代がありましたね。
えぐさ 最後に、屋久島の魅力についてお願いします。
うん、なんでしょう……? 土については私、まだ語れる立場にないんですが、私が屋久島で感動したのは、屋久島にはいろんな人がいるということですね。
さっきドジョウの話をしましたが、屋久島で、1937年以降ドジョウが見付かっていないことに挑み続けている人に出会ったことに感動して、その方を見ていて僕はまだ土に対する取組みが甘いなと思いましたね。屋久島じゅうの川と田んぼでドジョウを探し続けて、いない、いないと言っている人を見て結構感動して、屋久島に行くとそういう、いろんなことをやっている人に出会えるんですね。小原さんもそうですが、いろんな人が自然と関わっていて、僕なんかむしろ教えてもらうことが多いのですが、そういうチャンスがあるのが一番すごいところかな。
僕たちは(フィールドに入ると)現地のプロを探すんですね。現地のプロに教えてもらって、持ち帰って知ったかぶりするのが得意なパターン(笑)。
屋久島は生態学のメッカだけど、土は正直、メッカじゃない。まだ分かっていないことが多いんですけど、キノコ、植物、コケ、いろんな人たちがいて、そういう人たちの取組みの様子がとても勉強になったというのが、行ったとき感じたことですね。そこが屋久島の魅力なんじゃないかな。研究者サイドの立場ですが。
小原 いろんなことをやっている方が多様にいて、そういう人たちが横の繋がりで考えると、また新たなことが見えてきたりすることが非常によくあるかなと思います。
あとは私みたいにちょっと方向音痴な人間でも、そんなに大きな島ではないので、なんとなく把握しやすいっていうのがありがたいですね(笑)。
小原 まだまだ話足りないですが、とりあえず……。藤井さんの『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』の本は電子書籍しかありませんけど、土に関して細かく出ている『土 地球最後の謎』、藤井さんのご著書のこの2冊は読んでいただくと、いまの話がより理解できると思います。
本日の講師、藤井一至さんでした。ありがとうございました。