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【アーカイブ】屋久島はひと月に35日雨が降る 作家・林芙美子『浮雲』の世界

講師:王智弘さん
京都精華大学特別共同研究員

「資源」や「風土」をキーワードに屋久島の自然と人のかかわりを研究している。おもな著書に『臨床環境学』(共編著、名古屋大学出版会)、「資源の屋久島—「夢」をめぐる中心と周辺」『日本ネシア論』(分担執筆、藤原書店)、「資源の分配と社会的分業の展開—近代屋久島の林業と漁業」『資源と生業の地理学』(分担執筆、海青社)など。NPO法人屋久島エコ・フェスタ理事、龍谷大学非常勤講師。

オンラインセミナー 屋久島大学、最後の講座となりました。今回は文学から屋久島を掘り下げます。小説としても映画としても多くの人の記憶に残る林芙美子作・『浮雲』。この作品をただの悲しい恋愛破綻物語として読むのではなく、屋久島の風土や時代背景と重ねると、また違ったものが見えてくると、今回の講師、王さんは言います。小説の中に現れる単語や表現から、表面上は分からない主人公たちの心境、また林芙美子の心境が見えてくる、驚きの講座です。ぜひご覧ください。

  • 動画版
  • テキスト版(準備中)

※動画のどこでどんな話をしているか簡単な概要をまとめています。詳細な内容はぜひ全編をご覧ください。

本日のプログラム 02:17

  1. 林芙美子と屋久島
  2. 戦後復興期の日本と屋久島
  3. 自然の描写と「雨」
  4. 「浮雲的人間」の<狭さ>と<自由>

講演スタート 05:27

  • 林芙美子や浮雲を知ってますか? アンケート
  • 林芙美子はどのくらい有名な人だったのか?
  • 改めて、林芙美子とはどんな作家だったか
  • 完結した最後の長編小説『浮雲』
  • 林芙美子は屋久島のどんなところを見たのか?

「屋久島紀行」の朗読を聞いてみよう(えぐささんによる朗読があります) 21:55

  • 屋久島の人たちが語った林芙美子評

『浮雲』のクライマックスの舞台としての屋久島 26:58

  • 『浮雲』の中で語られる屋久島
  • 『浮雲』と「屋久島紀行」での雨の表現の違い
  • 一月に三五日雨が降るの表現は林芙美子独自ではない
  • 成瀬巳喜男の『浮雲』(映画)について
  • 小説と映画の違い

【雨】に注目して『浮雲』を読み解いてみる 42:45

  • <雨>の降り方――他の作品との比較
  • 人間と自然の架け橋となる表現に着目
  • 小説に出てくる<狭さ>と<自由>という言葉から分かるもの
  • 『浮雲』の出現頻度と物語の展開の関係 46:11
  • 自然と人間をつなげるような表現とは 50:46
  • 林芙美子の理想郷 自然と人間のたわむれ/植物と土地の関係 53:19
  • 屋久島の<雨>の敵意:根付くことの否定 56:21
  • 思想の<狭さ>と社会の<枠>の表現 1:03:19
  • 国家権力が入り込む男女関係と自由な孤独
  • 雨が晴れたあとの鹿児島――そしてエンディング
  • 『浮雲』を読み解く視点(まとめ) 1:19:35

屋久島の魅力の捉え方 1:20:17

  • 3人の著名人が見た屋久島 それぞれの表現に集約されている

雨、そして自然と人間の架け橋となる表現、さらに狭さと自由。この3つのキーワードを通すと、物語が全く違ってみるという驚きの回でした。特に「雨」については、その降り方の描写と心理描写や出来事がシンクロしている点、読者は意識しないにしても、その言葉/表現が織り込まれることで救いようのない主人公たちの心理を感じ取っていたことだと思います。そのシンクロと表現を切り離すとこんな読み方ができるという話、面白かったですね。もう一度『浮雲』を読み返さなければ、ですね。

こちらで「屋久島大学」プロジェクトのセミナーは終了です。と言っても3月以降もまだみなさまとのつながりを持ちつつ、様々な活動をしていきますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。

順次公開予定です。しばらくお待ちください。

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